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名古屋地方裁判所 昭和42年(ワ)1231号 判決

原告

岡田秀二郎

外二名

右代理人

加藤正次

森昌

高木伸夫

被告

名古屋市藤森南部土地区画整理組合

代理人

六鹿貞一

大場民男

主文

一、原告らの本件訴えを却下する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告らの請求の趣旨

1  被告組合がなしたる別紙第一、第二目録記載の各選挙は無効とする。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二、請求の趣旨に対する被告の答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二、当事者の主張

一、原告らの請求原因

1  被告組合は昭和四一年五月一九日設立認可を受けた土地区画整理法に基づく組合であり、原告らはいずれもその組合員である。

2  別紙第一目録記載の理事および監事の選挙について、

(一) 被告組合はその設立手続に多数の幽霊組合員が加わつたり、法律上幾多の瑕疵があつたため、六十数名の組合員から右組合の設立認可について無効確認の訴えが提出されていた。

(二) 昭和四一年六月五日、被告組合の第一回設立総会が開かれ、伊藤文秀が議長に選出されて、理事一五人および監事三人を選挙しようとしたところ、前記のような設立に関する紛争もからみ、議論沸騰、議場混乱し、収拾困難になつたので、その日は決議をなすことなく流会になつた。

(三) ところが被告組合の高柳宗明ら一部の者は、昭和四二年二月一二日午前一〇時に右第一回設立総会の再開総会を開催すると称して、その旨の通知を同年二月一一日頃各組合員に発送した。そして昭和四二年二月一二日高柳宗明らによつて第一回設立総会の再開総会が開かされたが、非組合員、委任状提出者、それに私服警察官等も混入し、出席者を確認することもなく開会したので、議場は不穏騒然となつた。よつて前総会議長伊藤文秀は流会を宣言し、数十名の組合員は退場した。

然るに右総会閉会後、会場に残つた者は選挙を行ない、別紙第一目録記載の理事および監事を選出した。

3  右理事は昭和四二年二月二七日被告組合の総代の選挙を行ない、別紙第二目録記載の総代が選任せられた。

4  右理事並びに監事の選挙は総会閉会後に行なわれたものであるから無効である。従つてその理事によつて施行された総代選挙も無効である。

二、請求原因に対する被告の答弁

1  被告組合が昭和四一年五月九日設立認可を受けた土地区画整理法に基づく組合であること、右設立認可について無効確認の訴えが提起されたことは認める。

2  被告組合が昭和四一年六月五日設立総会を開催したことは認める。右総会は組合員四九二人中三一六人の出席によつて適法に成立しており、又伊藤文秀が議長を辞任した後高柳宗明が議長に選出せられ、同人が議長とつて役員選挙を継続総会で行なう旨議決しているから、右総会は流会となつていない。

3  高柳宗明は被告組合設立認可申請代表者であつたから、組合員多数の要望により昭和四二年二月六日全組合員に対し、設立総会の再開総会を昭和四二年二月一二日午前一〇時に開催する旨通知した。そして右期日に開催された設立総会において、訴外高柳幸治が議長となつて審議した結果別紙第一目録記載の理事および監事が選出せられた。右総会において前総会議長伊藤文秀が流会を宣言し、それによつて閉会となつた事実はない。

4  右理事によつて昭和四二年二月二七日組合総代の選挙が行われ、同日別紙第二目録記載の組合総代が選出せられたことは認める。

第三、証拠関係〈略〉

理由

被告が土地区画整理法に基づく組合であること、および昭和四二年二月一二日と同月二七日に別紙第一、二目録記載の役員並びに総代の選挙が行われたことは、いずれも当事者間に争いがない。

原告らは本訴において、右役員および総代の選挙の無効確認を求めるものであるが、選挙の無効確認を求める訴えは事実の確認を求める訴えであるから、民事訴訟法の一般原則から云つて許されない。そして土地区画整理法には商法第二五二条(決議無効確認の訴)の如き規定を設けていない。よつて本件訴えは不適法であるからこれを却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九三条第一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

(松本重美 吉田宏 千葉勝郎)

第一・第二目録〈略〉

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